田原総一朗と佐藤優の対談を纏めた2冊の本が出ている。私はこの二人の意見に賛同する部分もあるので目を通して見たが、何故このような題名にしたのかは、よくわからなかった。しかし、田母神問題に際して田原が唐突に「昭和初年との類似」を言い出したのには、この対談があったのだと納得した。私は、田原の本はずいぶん読んだがここ2,3年はサンデープロの仕切りに呆れて全く無視していた。そのため「引退勧告」もしたのだが、この本の内容には私の関心領域に重なるパートがあることを今回知ることとなった。感想としてはこのような関心領域を持つ人間がどうしてサンデープロではあのようなことになるのかということである。
推察するに、田原は、当然のことながら、本をすべて自分で書いているわけではあるまい。協力者がいると思う。そのため、本に書いていることをすべて田原が理解しているとは限らない、という感想が浮かんでくる。寄る年波で血の巡りが悪くなり、サンデープロの司会にもキレがなくなっていることも、もとはと言えば理解力の不足が原因とも言えよう。政治問題に比べれば経済問題の理解は昔からハラハラものだったが、すべての課題を理解することは、今ではだれにもできないことなのだから、田原だけを責めるのもフェアでないともいえる。だがそれでも私は「引退勧告」を撤回するつもりはない。なぜならこのままでは「グリーンスパン」か「ナベツネ」になりかねないからだ。
その上で今回の本での彼の見解にはある程度の賛同を感じたのも確かである。貧困者の状況への関心もその一つだが、私の見解は田原と同じというわけではない。雨宮処凛の言う若年貧困者の問題を深刻に受けとめているわけだが、前から言うように、それがどれくらいのボリュームで存在するのかが問題であるのに、それについてはハッキリしたデータ提示がないからである。
年収200万以下の人数が1千万を超えたという国税庁のデータを二人は話題にしているが、田原は別のデータから(らしい)1千万世帯が年収200万以下で人数は2千万だとも云っている。国税庁のデータは雇用者だけなので事業所得者や自営業者、年金受給者などが入っていないから、1千万世帯で2千万人というのも変ではないが、その内の年金受給者が何人いるのか、或は、世帯全体の収入が200万以下なのかどうか、よくわからない。国税庁のデータでは、世帯各員一人一人の年収なので、世帯全体のことは把握できない。60歳以上の年金(のみ)受給者の場合は200万でも暮らしていけないことはないので、「貧困」問題とは一線を画すべきである。また100万以下の層には専業主婦も多いはずであり、それも除く必要がある。その上で「絶対貧困層」がどれくらいになるのか、それが問題である。
二人は「数十万人」という言い方をしているが、「病気等」で生活保護を受けている人はこれには含まれるのか、含まれないのか、それが問題だ。現在起きている「派遣労働者」問題の対象とは明らかに異質でもある。「とにかく貧困者が社会に充満して大変だ」というメッセージだけが独り歩きするのはよくない。後期高齢者医療制度を批判する連中のように、わけもわからず盛り上がっているだけのことになるからだ。
若年貧困者の問題についてはその親の世代である45歳から55歳前後の層の「窮乏化」が原因の一つになっているような気がする。しかし、これらの層にはこれから福祉を厚くしても、根本を変えることはできないから、20歳から30代初めまでの層に直接金が流れる施策を進める以外に最早方法はない。例えば、社保料や税金(所得税)などを減額することも一つの方法だ。国保、国年などは一定期間(10年程度)無料にしてもよい(その分は消費税を上げて全国民が負担する)。それでも働く場所がなく「絶対貧困」であるものを救うことはできないかも知れないが、多くの若者たちに希望を与えることはできるだろう。老人より若者を大事にしていることを打ち出す必要があるのだ。
田原、佐藤の主張はこの問題を過大にとらえ過ぎている。田母神問題の時も指摘したが、貧困者が充満していた昭和初年と圧倒的な中間層が存在する現在とを同一視することなどできはしない。それをあえてやっているのは、二人の「焦り」にしか見えない。
今日の毎日の記事で衆院立候補予定者790人へのアンケートがあった。「憲法改正」へのスタンスを見てみると「積極的、やや積極的」が300人「やや反対、反対」が300人中間が200人という感じである。当選する人数は恐らく積極方向が半分、中間及び反対方向が半分ということになるだろう。ここから類推して、田母神の主張を肯定するような連中は立候補で100人以下、当選で50人以下であろう。
自民党の議員が「ほとんど侵略戦争を否定している」などというのは、妄想であり、このアンケートを見る限り、憲法改正への道は遠いと思われる。それにもかかわらず、田原や佐藤が何を焦っているのか私にはよくわからない。