2、3日前の日経ネットニュースで、フィデリティ投信のアンケートの話しが報じられていた。見出しは「半分以上の人が年金が大幅に減額されると思っている」というものである。よく読んでみると、多少或は相当額減額という人も何割かはいるようだが、「年金がもらえなくなる」と思っている人は少数派(1割程度)だった。この記事も「年金不安を煽る意図的記事」である。なぜなら、フィデリティ自体がこうしたアンケートを取って、自分の業務上の意図につなげようとするのは、そうした広告を読む側もそれを前提に考えられるからある程度許容されるが、マスコミが報道することは、アンケート結果に客観性がなければ、何の意味もないのは明らかだからである。
この記事に客観性を与えるには、アンケート対象の年齢・職業などの明確化が必要である。例えば、60近くの人で自分の年金が半分になるなどと思っている人はほとんどいないだろう。そのような政策は誰も受け入れないし、自分もその多数派に属していると思っているからだ。一方、年金受給まで2、30年ある年代では、「増えることはないだろうし、もしかしたら半分くらいになるかも」と漠然と考えているわけでその意味ではこの記事はウソとは言えないが、その限定が必要だ。逆に言うと今から30年程度は、年金の額は減額になってもそれほど大幅ではなく推移するだろう考えているというのが「正しいこのアンケートの解釈」である。それを、日経の見出しはノベタンで「大幅な年金減額があると半分以上が思っている」と言っているのだ。
ハッキリ言って年金の額は増えて行くことはないだろう。30年後には現在の基礎年金792100円が70万程度になることは大いにありうるが、それ以上に減ることは日本経済が崩壊しなければありえない話しである。何週間か前に読売のネット記事で「30年後に年金崩壊」とかいうのもあったが、前提が「マイナス成長が30年続いたら」というものであった。バカにするな!そんな時には、年金どころか日々の職もなくなって「日本は崩壊している」。そんなことはあり得ないし、議論の余地もない。
盛山(セイヤマ)和夫「年金問題の正しい考え方」(中公新書)には多くの点で賛同した。2年前のこの本は、私の言おうとしていることをかなり言ってくれているが、明らかに間違っている部分もある。多くの場面で数式を使って説明しているが、必ずしもそれがわかりやすくなっていないし、それに溺れているきらいがある。
一つ目の間違いは、消費税の導入によって世代間の不公平を緩和する、という考えを批判しているところである。盛山は「年金世代の収入(消費税を含む)自体が現役世代の所得から出ているのだから、結局は現役世代の負担を軽くすることにならない」としているが、実際には消費税を導入することは年金世代の実質の年金額を減額することになるので、現役世代の負担は減るのだから、その議論はあやまりである。これは、小学生でもわかることで、それを数式を使ってごまかしているだけである。
二つ目は高山憲之の主張を真に受けた「三号被保険者の優遇というのは厚生年金の内部ではありえない」というものである。これもヘンな理屈である。高山の主張の眼目は「同じ報酬であれば同じ負担」という前提である。それでは、なぜ専業主婦を持つ夫と持たない夫あるいは単身者の報酬が違う例(倍の報酬)を掲げているのだ。同じ報酬にすれば高山も盛山もうまく説明できないのが1分でわかる。それをなぜこういう愚かな時間の空費をするのだろう。これは余計な紛糾を年金問題にもたらしており、今すぐにでも訂正すべきである。3号被保険者の非負担は不公平であるのは明らかで、何らかの負担を「夫」に求めるべきだというのが私の考えである。
その他にも盛山は「未納問題はほとんど問題ない」などと主張しているが、これも肯定できない。「未納」は年金制度の根幹を揺るがす問題ではないが、小さい問題でもない。未納を減らすよう全力で取り組むべきである。その意味でも「年金にはいると損をする」という論調が減ってきたのはよいことだ。
私は年金制度が崩壊することはありえないと主張しているが、正確に言えば「保険としては既に崩壊しているから、これ以上の破たんはない」ということであるともいえる。保険料が不足すれば、国庫から負担金が出るのであり、その調整だけが問題なだけだ。年金受給者が多数派であるのは永遠に続くから、「年金がもらえなくなる」ということは現在のアルゼンチンのように自給自足経済にでもならなければありえない。但し、それは許容できる範囲の減額を受け入れることが前提である。消費税で行うにしろ、直接の年金減額であるにしろある程度の負担は避けられない。
私が早目に消費税をあげることを主張しているのは、遅れれば遅れるほど、現存年金世代の「逃げきり」を許すからだ。しかし、それですべての問題が解決するわけでもない。ある程度、更に税率を上げてゆくことも選択肢であるが、「少子化問題」の解決が是非とも必要だ。
若い人たちは、「少子化問題」が何か現在の高齢者に影響があるような気分でおり、「自分たちの老後」の問題であるという”当事者意識”がない。この問題は現在の高齢者には(消費税があがらなければ)何も問題を齎さない。むしろこの問題で困るのは現役世代であることを明確に理解することが重要である。