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2009年5月

2009年5月27日 (水)

年金世代間格差の欺瞞

 各マスコミはこの2、3日標記の話題で大騒ぎだ。見識を疑うが、どうもこの背景には、厚労省側の思惑があるらしい。要するにこの世論を煽って年寄りの年金を削りたいということである。それに乗っているマスコミのアホさ加減にも呆れるが、そうした記事を見出しにするとアクセスが増えるということなのであろう。

 私は現在の高齢者の年金額は多すぎると考えているが、少ない保険料しか払っていないのに生意気だと思っているわけではない。世の中になぜそういう議論が生まれるのか本当に呆れてしまう。

 よく考えてほしいのは、自分の保険料を預けてその運用益と元金で年金を受け取るわけではないのだから、「コストパフォーマンス」の議論は出てくるはずがないということだ。80年代頃から「子供を作ることのコストパフォーマンス」の議論もよく語られたが、こうした「知ったかぶり」評論家の罪は大きいといえるだろう。

誰でも考えることでは、インフレの要素が大きいが、単純にそれだけで各世代の生活の実相を量れるわけはない。

 例えば、75歳以上のほとんどの高齢者には親への仕送りというものがあった。給与自体も安かったし、自由になる金自体が僅少であった。電化製品もほとんどなかったのであり、映画をみることが唯一の娯楽だった時期もある。その中で負担していた保険料が今より負担率が低かったなどとはとても言えないのだ。

 更に89年から導入された消費税も年金財政に貢献している。現在65歳の人たちは45歳であり最も購買力があったから、最大の貢献者であった。

 このように既に一部税金が投入されている以上、世代間格差の計算などできるわけがない。何故このような欺瞞が行われねばならないのか、を問うべきなのである。盛山和夫のいうようにこの格差の是正には年金額の50%減などが必要だが、そんなことは現実にはあり得ない。であれば何のためにこのような「不満」を述べるのか、本当におかしな話しである。

 現在は「コストパフォーマンス」でなく、給付と負担の全体の調整だけを考えるべきだ。そういう意味では、消費税を上げることで負担を平準化し、高年金者には所得税の強化が必要だ。

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2009年5月26日 (火)

NHK左翼思想の底流

4月5日に第一部が放送されたNHKスペシャル(「アジアの”一等国”」)の内容はヒド過ぎるものだった。つい2、3か月前にも「原爆投下と南京虐殺を同等に考える必要がある」というようなメッセージが放送されたことがあったと記憶している。

 「正論」派から当然多くの批判がでているようだが、今日たまたま河添恵子の記事を図書館で読んだので、私の意見を書いてみる気になった。

 日清戦争後の日本の台湾統治は、それ自体を「先験的に」断罪されるようなものではない。しかし、多くの左翼信奉者は「帝国主義的侵略」と言う名前でそのように批判してきた。それを覆す思想は未だ明確になっていないし、「自虐」のどうのと言ったところで何も進展しないが、問題とすべきことであるのは明らかだ。この番組を作った人は、「台湾が多くの帝国主義パワーの争奪の中心だった」というどこの馬の骨だか知らぬフランス人の歴史解釈を中心に据えて、日本がどうしても台湾を手に入れねばならなかったなどという暴論を展開した。そのため、日本の台湾支配も過酷にならざるをえなくなり、様々な残虐行為を犯したというわけである。

 日本が台湾の少数民族に対して武力制圧を進め、多くの兵士を失ったのも事実である。当然先方にはそれに倍する被害を与えたことだろう。彼らが日本の支配に怨念を抱くことも当然である。しかし、当時にあってみれば、フランスが行ったアルジェリアの支配と比較しても特にどうのこうのと言われる筋合いのものではない。「先験的な」悪事などではありえないのだ。

 もちろん個別の事件などの責任は当然負う必要があるが、100年以上たった時点で問題とすべきは、そのようなことではないだろう。

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2009年5月12日 (火)

年金はどうなるのか?

 2、3日前の日経ネットニュースで、フィデリティ投信のアンケートの話しが報じられていた。見出しは「半分以上の人が年金が大幅に減額されると思っている」というものである。よく読んでみると、多少或は相当額減額という人も何割かはいるようだが、「年金がもらえなくなる」と思っている人は少数派(1割程度)だった。この記事も「年金不安を煽る意図的記事」である。なぜなら、フィデリティ自体がこうしたアンケートを取って、自分の業務上の意図につなげようとするのは、そうした広告を読む側もそれを前提に考えられるからある程度許容されるが、マスコミが報道することは、アンケート結果に客観性がなければ、何の意味もないのは明らかだからである。

 この記事に客観性を与えるには、アンケート対象の年齢・職業などの明確化が必要である。例えば、60近くの人で自分の年金が半分になるなどと思っている人はほとんどいないだろう。そのような政策は誰も受け入れないし、自分もその多数派に属していると思っているからだ。一方、年金受給まで2、30年ある年代では、「増えることはないだろうし、もしかしたら半分くらいになるかも」と漠然と考えているわけでその意味ではこの記事はウソとは言えないが、その限定が必要だ。逆に言うと今から30年程度は、年金の額は減額になってもそれほど大幅ではなく推移するだろう考えているというのが「正しいこのアンケートの解釈」である。それを、日経の見出しはノベタンで「大幅な年金減額があると半分以上が思っている」と言っているのだ。

 ハッキリ言って年金の額は増えて行くことはないだろう。30年後には現在の基礎年金792100円が70万程度になることは大いにありうるが、それ以上に減ることは日本経済が崩壊しなければありえない話しである。何週間か前に読売のネット記事で「30年後に年金崩壊」とかいうのもあったが、前提が「マイナス成長が30年続いたら」というものであった。バカにするな!そんな時には、年金どころか日々の職もなくなって「日本は崩壊している」。そんなことはあり得ないし、議論の余地もない。

 盛山(セイヤマ)和夫「年金問題の正しい考え方」(中公新書)には多くの点で賛同した。2年前のこの本は、私の言おうとしていることをかなり言ってくれているが、明らかに間違っている部分もある。多くの場面で数式を使って説明しているが、必ずしもそれがわかりやすくなっていないし、それに溺れているきらいがある。

 一つ目の間違いは、消費税の導入によって世代間の不公平を緩和する、という考えを批判しているところである。盛山は「年金世代の収入(消費税を含む)自体が現役世代の所得から出ているのだから、結局は現役世代の負担を軽くすることにならない」としているが、実際には消費税を導入することは年金世代の実質の年金額を減額することになるので、現役世代の負担は減るのだから、その議論はあやまりである。これは、小学生でもわかることで、それを数式を使ってごまかしているだけである。

 二つ目は高山憲之の主張を真に受けた「三号被保険者の優遇というのは厚生年金の内部ではありえない」というものである。これもヘンな理屈である。高山の主張の眼目は「同じ報酬であれば同じ負担」という前提である。それでは、なぜ専業主婦を持つ夫と持たない夫あるいは単身者の報酬が違う例(倍の報酬)を掲げているのだ。同じ報酬にすれば高山も盛山もうまく説明できないのが1分でわかる。それをなぜこういう愚かな時間の空費をするのだろう。これは余計な紛糾を年金問題にもたらしており、今すぐにでも訂正すべきである。3号被保険者の非負担は不公平であるのは明らかで、何らかの負担を「夫」に求めるべきだというのが私の考えである。

 その他にも盛山は「未納問題はほとんど問題ない」などと主張しているが、これも肯定できない。「未納」は年金制度の根幹を揺るがす問題ではないが、小さい問題でもない。未納を減らすよう全力で取り組むべきである。その意味でも「年金にはいると損をする」という論調が減ってきたのはよいことだ。

 私は年金制度が崩壊することはありえないと主張しているが、正確に言えば「保険としては既に崩壊しているから、これ以上の破たんはない」ということであるともいえる。保険料が不足すれば、国庫から負担金が出るのであり、その調整だけが問題なだけだ。年金受給者が多数派であるのは永遠に続くから、「年金がもらえなくなる」ということは現在のアルゼンチンのように自給自足経済にでもならなければありえない。但し、それは許容できる範囲の減額を受け入れることが前提である。消費税で行うにしろ、直接の年金減額であるにしろある程度の負担は避けられない。

 私が早目に消費税をあげることを主張しているのは、遅れれば遅れるほど、現存年金世代の「逃げきり」を許すからだ。しかし、それですべての問題が解決するわけでもない。ある程度、更に税率を上げてゆくことも選択肢であるが、「少子化問題」の解決が是非とも必要だ。

 若い人たちは、「少子化問題」が何か現在の高齢者に影響があるような気分でおり、「自分たちの老後」の問題であるという”当事者意識”がない。この問題は現在の高齢者には(消費税があがらなければ)何も問題を齎さない。むしろこの問題で困るのは現役世代であることを明確に理解することが重要である。

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